「『はしもと』には、とにかく行ってみてほしい」
「すみちゃんに会わなきゃ、始まらないよね」
「料理っていうか、人なんだよね」
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「これが、みやぎ。」を作るための会議の中で、何度も耳にするお店の名前。「はしもと」という中華料理屋さんには、どうやら素敵な人がいるらしい……。
噂を聞きつけて鼻毛石を訪れると、紅白の暖簾がかかった、趣のある昭和建築があらわれました。
中華料理独特の、香ばしくていい匂い。「あなたが取材の人かい!ほら座って座って!」と明るい声で迎えてくれたのは、女将の「すみちゃん」。半世紀以上、宮城地区を定点観測してきたキーパーソンです。
「この店はね、23歳から始めたの。若かったから大変だったよ。でもみんなに応援してもらって、とにかく働いた。働いて働いて働いた。あのころは朝から夜まで、役場や農協の宴会があってね。それがやっと終わったと思ったら、小学校のイベントのためのお弁当づくり。コンビニもなかったからね」
「はしもと」は、昭和47年に夫の健二さんとともに開店したお店。すみちゃんのモットーは、「お客様は神様です」。どんなアドバイスも受け止めて、努力して、お店を守り続けてきました。名物の餃子とチャーハンは遠方のお客さんにも大人気で、埼玉や新潟から食べに来る方もいるのだそうです。
「お客さんから、『営業しててよかった』『すみちゃん助かったよ』って言われるのが、一番うれしいんだよね。私は人のためになる仕事をしてるんだって、元気が出るんだよ」
誰よりもパワフルに見えるすみちゃんですが、実は平成4年に乳がんを患っていました。
「私は死ぬんだ、と思って、ドラム缶で全部燃したんだよ。服も写真も本も、ゼロにしたんだ。これでもし手術が成功したら、私は第二の人生を歩むんだ、っていうつもりで」
手術は無事に成功、その瞬間からすみちゃんは「生まれ変わった」のだといいます。
「手術が終わったら、なんだかえらい元気になっちゃって。病院で有名人みたいになっちゃったんだよ。そのとき、私は私の人生を生きよう、って決めた。若いときに頑張ったから、好きなことをして生きていこうって思ったんだよ」
「足らないと困るだろうから、余計に作ってやるんだ」
「雨で催しが中止になって、食事が余ったから、配って歩いた」
「夜2時に起きて、全部手作りしてきたんだよ」
少し心配になってしまうくらい商売っ気のない、真っ直ぐなすみちゃん。「はしもと」は、まさに宮城の食堂です。
宮城の常連さん、遠くから駆けつけるファンに支えられて、「はしもと」は今日も温かい料理を届けます。
はしもと
住所:群馬県前橋市鼻毛石198-2
営業時間:11:00〜19:00
定休日:日曜日
道路を挟んで反対側にも駐車場があります。